キュレーションボックスが示した「選ぶ力」とテンプレの覚悟

Web制作の現場では、テンプレートのデザインが洗練され、
誰でも一定レベルのサイトを作れる時代になりました。

しかし同時に、

「見た目は整っているのに印象に残らない」
「綺麗なのに問い合わせが増えない」

そんな“無風状態のサイト”も増えています。

技術の問題ではありません。
テンプレの問題でもありません。

世界観が立ち上がらない理由は、“選び方”にあります。

その構造を決定的に理解できたのが、
東京藝大の公開講座で体験した「キュレーションボックス」でした。

目次

キュレーションボックス:同じ箱なのに世界観は一つも重ならなかった

課題内容はいたってシンプルでした。

自分のテーマ(何でもよい)に沿って、自分の身の回りなどで入手可能なものを集めたり自分で作ったりして、キュレーションボックスにそれらを「展示」し、「私の美術館」となるものを構築すること、でした。
これを言い換えれば、「同じ規格の小さな箱の中に自分の世界観を表現しなさい。」ということです。

素材もサイズも全員共通。
にもかかわらず、完成した作品は驚くほどバラバラで多様でした。

・箱そのものを大胆に装飾する人
・箱には一切触れず、中身だけで勝負する人
・箱との向き合い方自体を独自に解釈する人

まったく同じ“箱”という条件なのに、
作品には作者の価値観が凝縮され、
どれ一つとして同じ方向のものはありませんでした。

その瞬間に理解しました。

違いを生むのはスキルではなく、問い・選択・配置という「キュレーション」の力だ。


Web制作も本質は「キュレーション」である

制作会社はときに
「情報を整理して並べる仕事」
とWeb制作を理解しがちです。

でも、本質はまったく違います。

Web制作とは、

何を残し、何を捨て、どう配置し、どう見せるか。
つまり、キュレーションそのものです。

写真・文章・余白・フォント・色・動線。
それらをどの基準で組み合わせるかによって、
サイトの世界観は劇的に変わります。

藝大のキュレーションボックスと
構造は完全に一致していました。

最終作品の「THE FIRST DROP」を生んだ「カオス」をテーマにした試作品

没にした「カオス」をテーマにした最初の失敗?作品を敢えて公開します。これも失敗を見せる、という目的によっては使い道があったということで、それなら失敗ではありませんが、これなくして最終作品が生れなかった、と言う意味では、失敗ではありません。このアート制作の過程を見せる、と言う選択=キュレーションをこの記事で実行しています。

カオスからそぎ落としたシンプルでミニマムな世界まで、同じテーマであっても、ここまで変化する、ということをご覧いただけるいい事例となったと思いますので、敢えて、公開しています。


「箱を装飾する」:テンプレを世界観の一部として扱う制作

箱を外側から装飾した人たちは、
テンプレートを“デザインの素材”として扱うのと同じです。

・自分の作品にあわせて箱も作品と一体化させる

テンプレートを使いながらも、
ただの「額縁」でなく、箱もオリジナル表現が可能な作品の一部として扱う姿勢です。

これは、テンプレートをカスタマイズするのと同じであり、ボックスの装飾スキルを必要とした点が同じです。

 

箱を装飾するスキルの無い私は、デザインした印刷カードを貼る、という「お手軽なカスタマイズ」を行いました。

「箱をいじらない」:白いギャラリーのように中身の純度で勝負する制作

逆に、箱をまったく触らずに
“中身だけで勝負”している作品は私も含めて多数ありました。
私には箱を装飾する、という技術が無かったから、と言う理由でもあります。
私にWEBテンプレートを作る技術は無い、と言うのと同じですが(笑)

これは、テンプレートを
「白い壁」として扱う制作です。

・写真の質
・文章の構造
・情報の強弱
・余白の意味

これらの純度が、そのままサイトの強度になる。
アートギャラリーの白壁が作品の弱さを露呈させるように、
良いテンプレートも制作者の力量を露骨に問います。

だからこそ、

良いテンプレは“使いやすい”のではなく、“ごまかしが効かない”。

ここが最大の落とし穴です。


「箱を使わない」:形式に縛られないという姿勢

たった一人ですが、箱を使わないという作品もありました。
方法としては例外ですが、示唆は深い。

“形式”ではなく“意図”で選ぶ。

Web制作でも、本来
テンプレを使うかどうかは
目的と世界観から逆算されるべきです。
ただし、ビジネスの世界には、コスト、費用対効果と言う絶対に避けては通れない「壁」があるため、
予算が取れない場合には、数百万円レベルのフルスクラッチのサイトデザインは選択しようがない、という現実もありますが。


制作会社が本当に必要とするのは「選ぶ理由」である

方法論に優劣はありません。

・装飾する
・装飾しない
・形式を疑う

どれも成立していました。

違いを決めたのは、
“なぜその方法を選んだのか?”という理由の明確さでした。

Web制作もまったく同じです。

・なぜそのテンプレなのか
・なぜその写真なのか
・なぜその余白なのか
・なぜその順序で読ませるのか



これは、没にした途中段階の試行錯誤中の作品ですが、敢えてAIに選ばせたものです。

理由が曖昧だと、
整っているのに何も残らないサイトになります。

逆に、理由が明確なサイトはテンプレでもオリジナルでも関係なく、
強い世界観を持ちます。

ネットで売られているフリー素材の写真でも、生成AIの作る画像でも、別にかまわないのです。
キュレーションという組み合わせ、見せ方の構造、デザインが無限の世界感を生んでくれます。


白いギャラリーと良いテンプレは同じ構造である

アートギャラリーが白い壁を選ぶのは、
余計な情報を徹底的に排除し、
作品だけに向き合うためです。

しかしそれは同時に、
“作家にとって残酷な空間”でもあります。
作品の弱さが隠せないからです。

そして、良いWebテンプレートもまったく同じです。

装飾が少ない、あるいは一定の目的に沿って洗練されたデザインのテンプレートほど、
写真の粗さ、文章の薄さ、世界観の弱さが露呈する。

だからこそ、

良いテンプレを使うには覚悟が必要なのです。

 

アートギャラリーは白い壁が普通です。

AI時代、制作会社に必要なのは「アートマインド」である

いま、コードはAIが書く時代に入りました。
キャッチコピーからイメージ画像まで、何でもAIが「候補」を無数に示してくれます。

制作会社の価値が
「作れること」では差別化できなくなる時代です。

では何が価値になるのか。

必要なのは、その中から
選び取る力と意味を構成する力です。

これはまさにアートの制作と同じ構造であり、
キュレーションの思考そのものです。

QSDメソッド(Question / Selection / Design)は、
その思考を体系化したものです。

AIはコードを書けても、
世界観を選び取る”ことはできません。

つくる技術よりも、
“意味をつくる技術”が問われる時代。

制作会社に必要なのは、
アート思考、アートマインドであり、
キュレーションの視点
です。

先生との対話を通じて、どんどんそぎ落とし、最後に「人間の私」が選び取ったものはこの2つでした。
先生のアートセンス無くして選びきれなかった、そういう意味では、私の単独作品と言えませんが(笑)


まとめ

Web制作は、情報の作業ではなく
世界観を選び取る行為である。

テンプレートは“白い壁”であり、
使いこなすには覚悟が必要。

AIがコードを書く時代だからこそ、
制作会社の価値は「選ぶ理由」に宿る。

そして、これからの制作会社が目指すべきは、
技術ではなく キュレーション型Web制作 なのです。

悩んだら、是非、あなたもアートギャラリーや美術展に足を運んで
「作品」を見るだけでなく、その「キュレーション」にも注目してみて下さい。

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